親愛なる隣人へ。「偶然から始まった人生」のおはなし vol.1
親愛なる隣人へ。「偶然から始まった人生」のおはなし vol.1
偶然に起きたことがその後の人生を変えることがある。
自覚もないし、もちろん計算もしてない。だけど、確かに引き寄せられる瞬間。
心の動きを感じて、動いてみると、昨日と違った景色が広がる。
ここでは、とある5人が経験した「人生を変えた偶然の出来事」をご紹介。
人生のワンシーンを切り取るように、本人の直筆でお届けします。
【目次】 |
episode1 :内なる自分が言った。「でもチャンスやで」と。 episode2:深夜の思いつきで急に人生が変わる。 episode3:パートナーと2人で無職になった。 episode4:「僕は彼女に劣等感を感じてしまったのです」 episode5:燃える思いは、冷静に見詰めると、極めて危険な色をしていました。 |
episode1 :内なる自分が言った。「でもチャンスやで」と。
執筆:田村和広(ヒトの考えを形にして伝える仕事/1993.02.09/大阪市立大学卒業)
これは、青年(筆者)が、下心満載の立候補によって人生が動いたお話。
当時就活中であった青年は、少人数のイベントに参加し主催者から会社を紹介してもらい、まんまと内定を得ようとしていた。とあるイベントにて、チェックが眩しいジャケットの主催者が、自分の仕事を手伝ってくれる人の立候補を募った。
会場が静まる。青年の心臓は高鳴る。勢いよく手をあげようとした時、ふと横にいた人が目に入る。
「なんか思われたらいややな…」青年は立候補できなかった。
イベント後、「終わってから言うのもあれやし…」と帰ろうとした時、
内なる自分が言った。「でもチャンスやで」と。足先が熱くなり全身に血が巡る。
気がつけば、青年はチェックのジャケットをその目で捉えていた。
「あの..すみません!さっきのお手伝いの件ですが!」
あれから8年。あの時の主催者は、今では筆者の働く会社の社長。
立候補は、内定には繋がらなかったが、予期しない多くの出会いを筆者に与えた。ありがとう、青年。君の勇気と内なる自分に心を込めて。
■偶然を感じとるには?
内なる自分と話してみること。たまにいつもと違うことを言われて、それが偶然の連鎖を生み出す。
episode2:深夜の思いつきで急に人生が変わる。
執筆:木村華子(フォトグラファー・現代美術家/1989.8.5/同志社大学文学部美学芸術学科卒業)
周りがインターンに行き始める三年生の春、私は特に就きたい職もなく途方に暮れていました。そんなある日の深夜、コンデジ(※)で撮った写真をPCで加工して遊んでいた時に「そうだ、カメラマンになろう!」と急に閃いて今に至ります。
一眼レフも持っていなかったのに、その夜から猛ダッシュで方向転換。
有難いことに在学中から写真を撮ってお金をいただく人生が始まりました。
就活したくないし会社にも行きたくないという後ろ向きな消去法と、急な思いつきでたまたま選んだこの仕事ですが、自分でも不思議なくらい飽きずに楽しくやっています。
しかし何年か前に小学校の卒業文集を引っ張り出して見てみると、自分の将来の夢の欄に「絵描きかデザイナーか写真家になって世界一周するぞ!」と書いていてびっくり。そんなことをすっかり忘れて写真の道を選んだのは偶然なような、必然なような。今後も深夜の思いつきで急に人生が変わる可能性があると思うと、自分の未来にワクワクします。
(※)レンズ交換ができないコンパクトデジタルカメラ
■偶然を感じとるには?
「根拠はないけどいけるやろ!」という自分の勘を信じる。
episode3:パートナーと2人で無職になった。
執筆:松下恵里花(クリエイター/1995.03.31/京都造形芸術大学卒業[現:京都芸術大学])
パートナーと2人で無職になった。
その期間に直感で長野に住みたいと思い、彼と1週間旅行へ出かけました。たまたまゲストハウスのオーナーに教えてもらった本屋さん兼宿泊施設がよくて、彼は後日その会社に応募し、就職することに。私は旅行後も再就職するか、制作活動をするか悩んでいました。
休職中、大学や元同僚の友人に相談する中で考えが整理され、将来したいと思っていることを、今やってみてもいいのではという気持ちになりました。最後の一押しになったのは、金銭面では厳しくなるかもしれないのに、パートナーが「制作活動すると決めてくれて嬉しい」と言ってくれたことです。今は長野で服づくりなど、声をかけてもらえたものや、自分がつくりたいものを制作しはじめています。
パートナーと同じ時期に何もない時間ができたことできたからこそ、じっくり話したり、ゆっくり過ごすことができました。この時間があったから、いま健やかな生活ができていると感じています。
■偶然を感じとるには?
やりたいこと、思っていることを身近すぎない人に話してみる。
episode4:「僕は彼女に劣等感を感じてしまったのです」
執筆:嶋本 貴弘(美容師/1985.07.20/グラムール美容専門学校卒業)
漠然とですが、小さい頃から僕は「かっこいい人」「おしゃれな人」になりたい、と思っていました。そのために割と早い段階でファッションやヘアスタイル、音楽などに興味を持ちました。小学6年生ぐらいからですかね。お小遣いをためてアメ村に古着を買いに行ったり、タワーレコードでその時流行りのパンクバンドのCD買ったり、中学からエレキギター始めたり、美容室に髪切りに行ったり。かっこいいと思うことをすることがとにかく楽しくて。自分なりに憧れに近づけるような気がして。
高校は地元の公立高校に進学しました。その学校は校則が厳しく、髪を染めることが禁止でした。
高校に入って髪を染めようと思っていた僕にはつらい事実でした。そんな中、中学からお付き合いしている子がソバージュのようなパーマをあて、鮮やかなオレンジブラウンに染めました。彼女の高校は頭髪自由の学校でした。
会ったときの衝撃は今でも覚えてます。めっちゃおしゃれだったんです。彼女にこんな気持ちを抱くのも違和感かもしれませんが、「負けた・・・」そう思いました。僕は彼女に劣等感を感じてしまったのです。
僕もかっこいいヘアスタイルになりたいだけにとどまらず、僕も美容師になりたいかも、そう思うようになっていきました。
そこからはもう走り出したらとまりません。美容学校へ行き、美容師をして16年。あっという間でしたよ。でも、高校のときに感じた劣等感がなければ、もしかしたら美容師になっていなかったかもしれません。
今でも僕の中にあるものは、「かっこいい人」「おしゃれな人」への憧れ。それに近づけられる仕事、方法として僕は美容師という仕事を選びました。この仕事で憧れを追い続けようと思います。
■偶然を感じとるには?
僕は「直感」で生きています。人生は選択の連続だと思いますが、どんなときでも最初にいいと思った方を選ぶようにしています。
episode5:燃える思いは、冷静に見詰めると、極めて危険な色をしていました。
執筆:加藤郁理(水族館などミュージアムの企画/1987.11.10/京都大学 大学院卒業)
はじまりは、いつも旅。な気がします。
大学4回生。大学院への進学を控えていた私は、「僕は一体、これからの人生で何をしたいのだろう?」と数多くの大学生がぶつかり、砕ける通過儀礼のような問いに、ガッツリと取り組んでいました。
生き物が好きで積み上げてきた勉強と、実際の社会にある仕事がうまく繋げられなかったんです。思い返すと、ちょっと甘酸っぱい気持ちになります。
そんな中、気分転換に訪れた直島の地中美術館。モネの睡蓮に囲まれて、圧倒されて。動けなくなりました。そして、いくら悩んでも見つからなかった“やりたいこと”が、急に心に燃えあがりました。ここに負けないくらい感動できるような動物園や水族館をつくりたいな。と。
マイナビにもリクナビにも全く出てこない仕事。
燃える思いは、冷静に見詰めると、極めて危険な色をしていました(笑)。
でも、あれから10年。僕は今、水族館をつくっています。
偶然見つけた、種火は、意外に大きかったみたいです。
■偶然を感じとるには?
運命的な出会いは、きっと直感でわかります。あとは飛び込むか、どうか・・。
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人生の先輩たちによる偶然のお話はいかがでしたか?
それぞれの物語にある最初の灯火が、あなたの心が動くきっかけになりますように。
企画/株式会社 枠
編集/mao yoshida