記事を読む

自分の描く暮らしを大学生活から実験シリーズ① 「ぼくらが見つけた、心地よい暮らし」

2022.04.01
動き出し
ゼロイチインタビュー

自分の描く暮らしを大学生活から実験シリーズ① 「ぼくらが見つけた、心地よい暮らし」

自分の理想の生き方や暮らしを実験しながら過ごしている大学生・元大学生にお話をお伺いするシリーズ。第1回目のゲストは、シェアハウス・トッド荘を立ち上げた海里さんと、長野県で自給自足の暮らしをしているヒビキさん。彼らに「理想の暮らし」をテーマにお話をお伺いします。

ゲスト①
江本 ヒビキさん 京都工芸繊維大学卒業 
長野県出身。卒業と共に地元長野県に戻り、自給自足の生活をして過ごしている。

ゲスト②
亀田 海里さん 京都工芸繊維大学生
奈良県出身。ヒビキさんに影響を受け、京都でシェアハウス・トッド荘を作り、同居人と町屋を改装しながら暮らしている。

■2人の関係
ヒビキさんが在学していた頃は、一緒にパリへ行くほどの仲良し。1年早く卒業したヒビキさんが地元・長野県に戻っても定期的に連絡を取り続けて関係を続けている。実は今日、1年ぶりの再会。お互いの生活や暮らしについて、ゆるりと語り合います。
(撮影:トッド荘)

 

生活の「差」を体験して、自分に合う暮らしがわかった

ーヒビキさんは長野でどういう暮らしをしているんですか?

ヒビキ
田舎暮らしって色んなスタイルがあると思うんです。例えば、都会に住んでた人が田舎に土地買って、畑はやらずのんびりするっていう。それもひとつの田舎暮らしだと思うんですけど、僕の場合は自給自足や循環型の暮らしをしています。畑で野菜を作って、鶏を飼って卵も自給するし、鶏の餌も自分で作るし、果樹も作る。ぐるぐるエネルギーが循環する暮らしをしてますね。

▲飼っている鶏たち。そして採れたての卵と朝ごはんの目玉焼き。

 

ー京都の大学を卒業されていますが、地元へ戻ることを考えていたんですか?

ヒビキ
元々は大学院へ進むつもりだったんですけど、コロナで授業もオンラインになったし1回実家に帰ることになって。結構長く居たんですが、こっちでの暮らしが自分に合ってるなっていうのを実感したんです。実家の周りは自然そのものなので、すごく開放的なんですよね。畑もあるので好きなように野菜を作ったり、お米や小麦も作ったり。それを実際に採って、自分で食べるっていうその暮らしが合っていたんです。あと季節を感じることにも幸せを感じていたところがありましたね。

ー元々の実家暮らしに戻ることになると思うのですが、京都に来る前とは見え方や感じ方が変わったんですか?

ヒビキ
そうなんです。そこがすごく面白いところで、ずっと経験してたはずなのに認識してなかったんです。僕からしたら京都は都会なのですが、都会暮らしをしたことで体験の差が生まれて、そこで改めて認識できた感じですね。

▲現在住んでいる長野での暮らし。

ー大学院ではなく、長野に戻ろうって決めた時、不安や迷いはなかったですか?

ヒビキ
不安も多少ありましたけど、色んな選択肢があって選んだというよりかはもうなるべくしてなっちゃったというか。田舎での暮らしにすごい魅力もあったし、今はビジネスとかそういう意味合いでも未来があるなという風に感じています。

 

縛られることなく、自分に合った生活をしていることが羨ましい

ー海里さんはヒビキさんの暮らしを見て、シェアハウスを始めたんだとか。

海里
そうなんです。シェアハウスを始める前、今同居人しているうちの3人でヒビキの家に泊まりに行かせてもらったことがあって。みんなで1週間ぐらい半同居状態で過ごしたんですが、その時は半自給自足の暮らしに興味があって行ったんですけど、色々遊んだりしてる中ですごく仲良くなって。帰ってきた夜に、メンバーと飲んでる時にこのまま一緒に住んだら楽しいんじゃないかってことになり、同居生活を始めることになりました。

▲トッド荘は、同居人以外にも友人づてに様々な人が訪れる。

ーヒビキさんの生活に影響を受けたということですが、何か羨ましいと感じたことがあったんでしょうか。

海里
羨ましいというよりかは、ヒビキのように9割くらいを自分たちで賄っているけれど、それに縛られていないというか。自分たちにとってどんな生活、暮らしがあっているのかをちゃんと認識して生活している所がいいなと思いました。「せっかく大学出た」とか、「こういう職に就かないといけない」とか、そういうのに縛られなくていいんだなって再認識できました。

▲古い町屋を改装しながら暮らしている。

ー経験のない中、シェアハウスをすることへの不安はなかったですか?

海里
その時は酔っ払ってる時に決めちゃって(笑)。僕の性格上、数日後に行動を始めるというのがどうしても苦手なんですよ。だから決めた日に不動産屋さんが開くまでみんなで徹夜して、開いた瞬間に電話してもう内見行きますっていうふうに色んな不動産屋さんにめちゃくちゃ電話かけて決めたんですよ(笑)。勢いで決めることが僕にとっては、とても大事なんです。

ヒビキ
海里は行動力が鬼なんです。だけど時間を置くと急速に下がり始めるので、思い立ったら吉日という感じ。

 

やりながら、きっとこの道ではないってわかった

ー大学生活を過ごす中で、モヤモヤ期ってなかったんですか?

ヒビキ
ありましたね。お互い入学した時は一応(生物の)研究者になることを考えてたと思うんですけど、やっていく中で僕も海里もなんかやりたいことと多分違うんだろうな〜って感じてました。

海里
生物系の学科にいながら、デザインについても勉強してきたんですけど、デザインのほうが自分の性格とかやりたいことにあってるのかなって思ってました。当時はなんか失敗したなって言ってヒビキと文句言いながら必死にレポートとかやってたんですけど(笑)。だからといって生物学を辞めるわけではなく、勉強した内容って結構デザインでも生かせてるんです。振り返ってみると続ける忍耐力も付いたしデザインをやる上で広い知識も得られたし、最終的には良かったと思います。

大学以外でも、企業のデザインプロジェクトに精力的に参加している海里さん。

 

ー2人とも自分が感じていることに敏感というか、よく理解しているなと思うのですが、物事と向き合う時に大事にしていることはありますか?

ヒビキ
抽象的ですけど、本質を掴むように意識してますね。表面的なものをそのまま捉えちゃうと、誤解じゃないですけど、浅く捉えてしまうのでそこから生まれるものってネガティブなものになっちゃうような気がします。難しいんですけど、水面下にある部分も捉えようとしてますね。

海里
ここは僕とヒビキが大きく違うなって思うところなんですけど、ヒビキは走り出す前にちゃんと走れる道かとか、障害物があったらそれをどう受け入れるかとか、ある程度算段をつけてから走り始めるタイプだと思うんです。でも僕は走りながら考えるタイプなんですよ。なんか楽しそうとか興味があるからやるとか、行動力しか僕はないので、大事にしてることも「直感」としか言えなくて。

 

先を決めすぎちゃうのはもったいない

ーこれからどんな活動をしていきたいと考えてますか。

ヒビキ
ファームインって呼ばれている体験型宿泊施設の運営を計画しています。農業をやっている家に泊まって暮らしを体験するという内容なのですが、今年のうちに準備をして、来年あたりにオープンできればと思っています。

▲ヒビキさんの畑や果樹園で採れた新鮮な野菜たち。

海里
僕の周りは就職決まってる人も多くて、それぞれ進路を見つけてやっていってるんですけど。僕はどうしても打算的なことが苦手で。その時、1番興味ある方向にしか走れない。今興味あるのは間借り喫茶なんですが、すでに始めようと動いてて…。

ーすでに動き始めているんですね。間借り喫茶ってどのようなものですか?

海里
例えば毎週土曜休みの喫茶店があったとしたら、土曜日にだけ喫茶店を借りて、別の名前でオープンさせてもらう形になります。知り合いのところでスタートできたらと思ってて。僕、椅子や食器や照明を集めるのが大好きなんですけど、全て買っていたら家に絶対に収まりきらないんです。だから循環できるような場所があると素敵だなと思って。僕が心惹かれるものに共感してくれたら嬉しいし、全然知らない人とも出会って喋れたら楽しいなって思っています。

▲トッド荘にあるインテリアは、海里さんが骨董市などで集めてきたものが多く並ぶ。

ーこの先も今のような暮らしを続けていく予定ですか?

ヒビキ
長野での生活がこの先も自分に適しているかどうかは分からないかなでも拠点としてはずっと置いときたい。あと僕京都もすごく大好きで、他にも別の寄りどころがあればいいなと思ってます。

海里
正直なところあんまり縛られたくないというか。トッド荘は自分たちで改装して好きなものを置いていて、もちろん思い入れはめちゃくちゃあるんです。新しい1回生も入居予定なので、この場所を残せるのは嬉しい。でもこの先、もしかしたら仕事を始めたら価値観が変わるかもしれない、一緒に住みたいパートナーができるかもしれない、その時1番大事にしたいと思う選択肢を取れたらいいなと思ってます。

ーみんなわりと決まった計画が欲しかったりするけど、2人とも分からないっていうことに対してポジティブな印象ですね。

ヒビキ
なんか決めすぎちゃうっていうのはもったいないかなって。結局人生って全部思い通りにはいかないし、なるようになってなったっていうのが多分みんなの答えだと思うんで。僕もその通りに生きてます。

企画・撮影/株式会社 枠
編集・文/mao yoshida

関連記事